白黒で描く漫画に色や立体感を与えるのがスクリーントーンです。けれどもその種類は実に膨大な数となりますし、貼り方に王道というものもありません。
そこでこれから漫画を描こうという方にも参考になるように、スクリーントーンの選び方をご紹介します。また使い勝手の良いおすすめの商品も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
スクリーントーンの選び方
漫画を描く際に、色の表現や背景に使うのがスクリーントーンです。手描きで行うよりも効率が良いので、一般的によく使われています。
同じ下絵でもスクリーントーンの使い方によって、雰囲気は大きく変わります。そこでどのようにして選べば良いのかをご紹介します。印刷した時の仕上がりもイメージして選ぶことがポイントになります。
線数と網点の基本を知っておく
スクリーントーンで最もよく使われるのが、ドットパターンのものです。これは印刷した時にグレーに見えるものですが、そのグレーの諧調によって色の濃淡を表現することになります。基本的にドットの密度が濃くなるとグレーも濃くなりますし、逆に薄くなれば薄い色を表現することになります。
ところでスクリーントーンでは、Lや%でその濃淡を表しています。Lは線数を、%は網点の濃さを示します。
まず線数ですが、1インチ四方あたり点が何個あるのかを表しています。例えば60Lと表記されていれば、約2.54cm四方の中に60個のドットがあることを表します。この数値が大きいほどにひとつの網点(ドット)が小さくなります。
次に%ですが、これは網点の濃さを表します。数字が大きくなるほど濃くなっていきます。100%の場合は、いわゆるベタと呼ばれます。
線数の選び方を知ろう
線数は網点の細かさを表します。数字が大きくなるほどドットが小さくなるので、グレーの表現も自然なものとなります。逆に線数が少なくなると、ドットが肉眼でも見えるようになります。
線数選びの注意点
では極力線数が大きなものを買えば良いのかというと、一概にはそうは言えません。例えば網点が小さなスクリーントーンの場合、線数が大きくなるとひとつの点が極めて小さくなります。すると一般的な印刷機で印刷すると網点が無くなる場合があります。つまりグレーを表現したいのに、白く飛んでしまうわけです。
一般の印刷ならば、高精細印刷で線数の大きな印刷が可能となります。けれども漫画の場合には、そこまでお金をかけて印刷することはありません。
そこで一般的に使われる線数としては60Lくらいが妥当ではないかと思われます。また作品内のスクリーントーンは、線数を統一した方が良いとされます。
モアレについて知っておこう
線数を統一する理由は、異なる線数のスクリーントーンを重ね合わせると、モアレと呼ばれる模様が出てしまうからです。
このモアレは、スクリーントーンを貼っている時には出現しないのでわかりません。けれども印刷してみると、無かったはずの変な模様が出てしまうのです。
場面に応じて線数を使い分ける
例えば顔の影の場合でも、その表現は場面によって変わります。同じ網点を使っても、明るい場面や暗い場面で線数を変えることで表現を変えることができます。
網点(トーン)の選び方
スクリーントーンでは網点(トーン)の種類も豊富にあります。けれども漫画印刷で表現できる%には範囲がるので、知っておいた方が良いでしょう。通常は10%から60%くらいが限度とされます。
それよりも少ない%となると、網点は印刷時に飛んで消えてしまいます。逆に%が多くなるとつぶれてベタになってしまいます。どこまで使用できるのかは。実際に経験してみないと分からないかもしれません。
そこで本格的に漫画にスクリーントーンを貼る前に、いくつかのパターンを印刷してみて、自分の目で確かめた方が良いかもしれません。
グラデーションの選び方
スクリーントーンのドットパターンには、網点が均一になったものの他にグラデーションになったものがあります。立体感や遠近感を表現するのに利用できます、
このグラデーションも、網点によっては綺麗に表現できず、ムラが出る場合もあります。諧調の%がどこまで表現されるのか、実際に印刷して確認することをおすすめします。
複数のスクリーントーンを組み合わせる
例えば革ジャンのような質感を表現したい場合、スクリーントーンを単独使用前提で探すとなかなか見つかりません。このような時には、異なるトーンのものを組み合わせると良いでしょう。光の濃淡を考慮してうまく明るい部分と暗い部分を表現するように、スクリーントーンを選ぶことがポイントです。
特殊なパターンのトーンを選ぶ
スクリーントーンの網点は、単純にドットを均一に並べたものだけではありません。チェック柄になっていたり砂目と呼ばれるものであったりと、色んなパターンのものがあります。
これから例えば洋服の模様など決まった用途に使うことができます。けれども作品の雰囲気に応じて選ぶという方法もあります。
例えば少女漫画を描く場合、星の輝きが入ったドットパターンは普通に使うことができます。あるいは少し古い時代背景の設定である場合に、砂目などを使うと雰囲気を出すことができます。
このように特殊なパターンのスクリーントーンを、作品の雰囲気を作るために選ぶことができます。
印刷された後のことを念頭に
スクリーントーン選びで重要なのは、網点が飛ばないこととつぶれないことを念頭に置くことです。原稿では綺麗に表現できていても、実際に印刷されると縮小されることも考慮する必要があります。
網点も縮小されることで、ちょっと濃いかなと思える部分はつぶれて真っ黒になってしまうケースもあります。トーンが濃い部分は多少つぶれることを想定して、少し少ない%のものを選ぶといったテクニックも必要になるかと思います。
また、利用する印刷所によっても仕上がりは変わります。同じスクリーントーンを使っているのに、印刷所を変えると色味も変わるということはよくあります。
そこで、利用する印刷所を決めた上で使用するスクリーントーンを選ぶということも必要になります。
メーカーごとの特徴を知っておく
スクリーントーンはいくつかのメーカーから販売されています。それぞれ特徴が異なるので、把握しておくと良いでしょう。例えばマクソンというメーカーは珍しい柄のスクリーントーンを多く出しています。あるいはデリータは価格が安めで種類も豊富に揃っています。
また品質もそれぞれ異なりますし、中にはうまく貼らないと破けてしまうようなものもあります。自分が使いやすいメーカーはどこなのかをチェックしてみるのも良いでしょう。
スクリーントーン人気おすすめ商品TOP10
スクリーントーンは使用する種類も増えるものですが、単価は決して安いものではありません。そこで効率良く購入できるように、おすすめの商品をご紹介します。
特に同人誌などで使用するような方は、無駄に出費が増えることのないように使えるパターンを選んでいただければと思います。ランキング形式で取り上げていますので、参考にしてみてください。
デリーター スクリーントーンセットVol.7
B4サイズのデリータースクリーンのテクスチャ2種類・チェック・花柄の計4種類セットになります。花柄は服や背景など様々な用途に活用できます。チェックは主に服に使用するケースが多いものです。
テクスチャは建物や背景などの用途で使用するので、2パターンあれば色んなシーンで利用できるでしょう。総じて背景などに活用するセットであると言えます。
アイシー スクリーン S-61
フィルムの裏がワックスタイプの接着剤となっているために、仮貼りをしたり貼り直しがしやすいタイプのスクリーントーンです。また透明フィルムに貼っていあるので、消してはいけない文字や線を消してしまう心配がないのも魅力。
マンガを描く際に比較的多用されるトーンなので、持っていて損はないデザインといえるかもしれませんね。
アイシースクリーン ユース Y-1071 65L/10%
高い品質と印刷時の仕上がりが綺麗なIC社のスクリーントーンです。65線10%の網点になります。建物などの背景や人物の影に、あるいは服などに便利に活用できます。
線数が多いので、遠くの背景での影に最適ではないでしょうか。背景をかなり描き込むような方は多く消費するので、いくつか用意しておけば安心だと思います。
デリーター スクリーントーンセットVol.4
デリーター社のB4サイズスクリーントーンです。濃いグラデーション4種類がセットになっています。グラデーションパターンはSSE-406・409・411・413になります。
立体感を出すためには必須のアイテムなので、あらゆるクリエーターの方におすすめです。濃い色を表現するので、服や髪などに使用しますが、ひとつの作品で多く使用するものなのでいくつか用意しておくと便利です。
デリーター スクリーントーンセットVol.2
デリーター社のスクリーントーンの、基本的な網点セットです。パターンはSE-50・51・53・55となっています。線数と網点%はそれぞれ55線5%・55線10%・55線30%・55線50%となります。
印刷時にはしっかりと模様が出るので、コミケ用に描く方もプロの漫画家の方でも、活用シーンが多いのではないでしょうか。
デリーター スクリーントーンセットVol.8
デリータースクリーンの背景をセットにしたスクリーントーンです。内容としては、SE-858(空)とSE-1131(校内)、SE-1259(夜景)にSE-1265(茂み)となります。
特定の場面にしか使用しませんが、例えば学園ものの漫画には役立つアイテムと言えます。手書きよりも簡単に作成できるので、初心者におすすめの商品と言えます。
デリーター スクリーン SE-1329n 2枚セット
音符をデザインした背景に活用できるデリーター社のスクリーントーンです。一般的な背景よりもイメージ画像を表現するのに適した模様となります。
思い描くイメージを上手く表現できないような場合に活用することもできるので、漫画を描き始めた初心者の方にもおすすめの商品です。2枚セットになっているので、同じようなシーンで利用できます。
デリーター スクリーントーンセットVol.9
イメージ背景などに活用できるデリータースクリーントーンです。セット内容はSE-1020(キラキラ)とSE-1176(黒いもや)、SE-1189(カケアミのもや)にSE-1227(リング)となっています。
細かな背景を描き込む必要がないので、作品を仕上げるまでに時間がないような時にも便利です。ひとりで作品を作っているような方におすすめです。
デリーター スクリーントーンセットVol.1
デリータースクリーントーンの基本的な網点セットです。内容はSE-30・31・33・35と線数が少ないので、粗めのデザインになります。細かな網点との組み合わせで色んな背景を表現できます。
使い勝手が良い網点%なので、初心者からプロまであらゆるユーザーにおすすめできます。印刷時にもくっきりと諧調表現をすることができます。
デリーター スクリーントーンセットVol.3
使用頻度が最も多い網点の基本セットになります。セット内容はSE-60・61・63・65となっています。濃いめの影や建物、背景などを描き込む手間を省くことができます。
均一な網点による仕上がりとなっているので、線数が多い割に印刷時にもつぶれにくいのが特徴です。コミケ向けの作品作りにもおすすめできる商品です。
スクリーントーンの効果的な使い方
スクリーントーンの使い方にはマニュアルも王道も無いと言われます。作家さんそれぞれが独自に工夫して使いこなしていますし、それが醍醐味でもあるかと思います。
ここではこれからスクリーントーンを使う初心者の方にも参考になるように、使い方をご紹介します。基本的なことですがしっかりとマスターした上で、自分なりの使い方を探し抱いていただければと思います。
トーンを選び原稿に乗せる
まず使用するスクリーントーンを選び、使う場所の上に乗せて使用するスペースよりも大きめにカットします
原稿に圧着させる
次に裏紙からトーンを破れないように剥がし、原稿の上に置きます。この時ゴミが入らないように注意してヘラなどでこすり圧着させます。
網点シートは角度に注意を
網点のスクリーントーンは、角度を変えると他の網点と干渉してモアレを起こすことになります。スクリーントーンを重ねる時は、必ず水平に貼って角度がずれないようにする必要があります。
仕上げる
最後に余分なところのトーンは切り離し、上に紙を敷いてヘラでこすり圧着させて終了です。
まとめ
漫画を描く際には、誰もがスクリーントーンの使い方に苦労します。経験を積んで自分なりのやり方というものを見つけ出す以外に方法はないようです。
膨大な種類があるので、あとはいかに作品の雰囲気を出せるかがポイントになります。大切なことは、印刷した後のことも考慮するということです。つぶれやモアレなどに注意して、適切に選ぶようにすることが大事です。