家庭に備えておくと便利な工具のひとつに「バール」があります。バールは大工さんや内装業の方など、職人には欠かせないアイテムですが、DIYや日曜大工などにも重宝しますよね。
また、最近では防災意識の高まりもあって、地震などの災害に備えてバールを購入する方も増えています。いざというときのために、自宅や職場に買い置きしておこうと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、あると便利なバールの選び方のポイントや人気商品の特徴などについてご紹介していきます。バールはさまざまな用途に使うことができ、多彩な品揃えがありますから、ご自身に合う商品を見つけるための参考にしてくださいね。
バールの選び方
そもそもバールは、てこの原理で重い物を持ち上げたりする金属製の「金梃子(かなてこ)」という棒状の道具のことで、釘抜きなどにも使われる工具の総称です。バールの両端を異なる形状にすることによって、1本で複数の用途に使えるマルチ仕様になっている商品が多いです。
見た目は同じように見えるバールですが、用途に応じて多種多様な商品があります。さまざまなバールの中から自分に適した商品を選ぶために、以下の検討ポイントをチェックしていきましょう。
バールの形状・タイプで選ぶ
バールは主に以下のようなタイプに分類することができます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
スタンダードな「平バールタイプ
バールのスタンダードな形状とされるのが平バールです。先端部分や持ち手の断面が平たい形状になっているのが特徴で、シンプルな形状ながら釘抜きや剥がし作業などに幅広く使うことができます。片側がL字型に曲がっていて、釘を挟める先割れ形状のものが一般的です。
釘抜き専用の「カジヤ(鍛冶屋)タイプ
バールの両端共に先割れ形状になっている、釘抜き専用として用いられることの多いタイプです。日本に昔からある道具のひとつで、片側はL字状に曲がっています。曲がっている側は小型ハンマーとして使うこともできます。
マルチ機能の「三徳釘締めタイプ
釘抜きの他、小型ハンマーや釘締めとしても使えるマルチ機能のバールは「三徳釘締め」と呼ばれています。片側はL字型、反対側はまっすぐで先端が尖った形状になっているのが特徴です。釘の頭を木材などの表面より深く沈めたいときなどに便利です。
内装作業に便利な「スクレーパーバール/インテリアバール
釘抜き用ヘッドの反対側の尾部が、ヘラのように広がった形状になっているのが特徴です。スクレーパーとは「ヘラ状の器具」を指す英語で、内装作業に便利なことから商品によってはインテリアバールと呼ばれています。ヘラ状の部分は狭い隙間に差し込みやすく、剥がし作業に適しています。
切れ込みの有無は?
バールの先端は、V字の切れ込みが入った先割れ形状になっているタイプと、切れ込みがなく平坦な形状のものがあります。両端どちらも先割れ形状のもの、片側は平坦な形状になっているものなど商品によって組み合わせは異なります。
切れ込みがあるものは釘抜きに最適で、平坦な形状だと剥がし作業がはかどります。「釘抜きにも使うし、災害用にも備えておきたい」など、用途が限定されていない場合は、両タイプが付いている商品がおすすめです。
バールの長さもいろいろ
市販のバールの長さは、15㎝程度のコンパクトなものから1m以上ある長尺タイプまで幅広い選択肢があります。家庭用で主な用途が簡単なDIY程度であれば、道具入れに収まるくらいのミニバールでも事足りるでしょう。
内装のリフォームなど、建具や内装の解体を伴うような本格的な作業をする場合は、少なくとも50㎝以上ある方が、てこの原理が働きやすく使いやすいです。ただし、一般的に1mを超えるバールは釘抜き用としては使い勝手が良いとは言えないので、作業内容を考慮に入れて扱いやすいサイズのものを選びましょう。
緊急用には長尺タイプが便利
最近では、バールを災害時や非常時のために用意しておく人も増えています。てこの原理で重いものを持ち上げたり、こじ開けたりすることができるバールは、がれきの撤去やドアのこじ開けなどにも重宝し、長さがある方が力を加えやすいです。そのため、非常時用として購入する場合は1m程度のものを選びましょう。
長尺のバールであれば、救助のために板を突き破ったりガラスを割ったりするときでもパワフルです。
取り回しやすい重さかどうか
バールの使い勝手は、長短だけではなく重さによっても左右されます。コンパクトな商品の中には100g程度と超軽量タイプもありますが、長尺タイプだと2.5kg程度とちょっとした鉄アレイくらいの重さのものも。
使いやすそうな形状のバールを買っても、取り回しにくい重さだと元も子もありませんから、特に女性が使う場合は重さも考慮に入れましょう。
一般的に重さは長さと比例しますが、長いものでも素材や形状の工夫によって軽量化を実現したものもあります。例えば、炭素鋼など軽い素材を使えば、同じ長さでも500g以上軽くすることができます。また、パイプのように中を空洞にすることで軽量化に成功した商品も人気があります。
強度・耐久性も要チェック
強い力を加え、ハードな使い方をすることがあるバールは強度や耐久性も大切な検討ポイントです。材質は鋼や特殊鋼材など強度が高いものかどうか確認しましょう。
一般的に、焼入れという熱処理がバール全体に施されている仕様であれば、高い硬度があり耐久性にも優れています。また、ハンドルとヘッドの接合部に抜けにくい処理が施されているものがおすすめ。ステンレス製やクロムメッキ処理など、錆びにくい仕様だと雨天の屋外利用でも安心です。
持ちやすいかどうか
ハンドル部分の形状は、丸型・六角・八角などさまざまですが、六角・八角のように角があるタイプの方が、使用時に力を入れても滑りにくいでしょう。バールによっては、ハンドルに滑り止めの処理が施されていたり、本体にグリップが付いているタイプもあります。
特にバールをハンマー代わりに使う場合、滑りやすいものでは危険ですから、持ちやすさについてもしっかり確認しましょう。
ロープを通せる仕様だと安全
高所で使うことがある場合は、バールに安全ロープを通すことができる穴が付いているものだと落下防止になり安全です。
バール人気おすすめ商品TOP10
では、どのようなバールが使いやすく人気があるのか、売れ筋10商品の特徴を見ていきましょう。
SUNFLAG(サンフラッグ) ミニバール 47
コンパクトで手軽に使えるミニバール。小型ながら叩く・こじる・抜くとさまざまな用途に活躍する、あると便利な一品です。長さ15㎝、重さ78gと邪魔にならないサイズなので、工具入れなどにも収納しやすいでしょう。
大掛かりな解体作業などには不向きですが、釘抜きや缶の開封など日常生活の細々とした場面で役立ちます。材質は耐久性に優れた特殊鋼。ハンドル部分は握りやすく、女性でも力を入れやすい仕様になっています。低価格なところも魅力ポイントです。
土牛 インテリアバール V型 200mm
内装作業がはかどる土牛製のインテリアバールです。先端部分は一方が釘抜き用のバール形状、もう一方はヘラ状になっていて用途に応じて使い分けることができます。全長20㎝、重さは180gとコンパクトで使いやすいです。
ヘラ状部分は適度なアールが付いているため使い勝手は良好。ヘラの先にも釘抜きが付いているのでマルチな使い方が可能となっています。バール側は小型ハンマーの代わりにもなり、ボードの幅寄せなど微調整にも重宝します。
土牛 ノウリツバール
フローリングをハンマーで叩いて寄せるときに重宝する土牛のバールです。90度に曲げられたヘラ状の先端を利用してフローリング材に押し当て、その上からハンマーで打ち付ければ板に負担を与えずにしっかり寄せることができます。
ヘラ部分はスクレーパーとしても使用可能。反対側は釘抜きに使用でき、リフォームや模様替えなどにマルチに使える一品です。黄色いグリップ部分が付いていることにより、床材などを傷つけにくいところも魅力ポイント。長さ31㎝、重さは470gです。
TRUSCO バール 280mm TB280
長さ28㎝、重さ350gのトラスコ製バールです。素材は、軽量で耐久性に優れた中炭素鋼を採用。スリムでコンパクトな形状ですが、適度な重量感があり、日常使いには便利で使いやすいと好評です。
両端ともにバール形状になっているカジヤタイプなので釘抜きに最適です。両端の厚みが異なり、スリムな側はテコ作業や剥がし作業に適した形状になっています。モノトーンでまとめられているためスタイリッシュさがあり、工具にありがちな無骨な感じがないので見た目にもこだわりたい方におすすめです。
バクマ 六角鶴首バール 19×900mm
ヘッド部分が鶴の首のように曲がっているバクマの六角鶴首バールです。長さ90㎝、重さは2,2kgです。曲がり具合が絶妙なので、持ったときのバランスが良いと評判です。
鶴首ヘッドはハンマーのように使うこともでき、解体や粉砕が必要なシーンで重宝するでしょう。長さがあるため、手で持ち上げるのが難しい側溝を上げるのにも便利です。全体的に焼入れがなされているので、強度・耐久性の高さも高水準。女性が扱うにはやや重さがありますが、いざというときのためにあると役立つ一品です。
ヒラタ印 ごくかるバール900mm 2022
全長90㎝の軽量バールです。「ヒラタ印」で知られる小山刃物製作所が手がけたバールで、長さがある割に約1.5kgと重量が抑えられているため、女性でも扱いやすい仕様になっています。
丈夫で耐久性のある熱処理鋼管は軽量でもあり、同様のバールの中では国内最軽量クラスです。用途は釘抜きの他、テコ作業や剥がし作業など幅広く使えます。落下を防ぐためのケーブル用ホールも付いているため、高所でも安全に使うことができます。
バクマ カナテコバール 22×1200
長さ1.2mのバクマ製カナテコバール。バール全体に焼入れ処理が施されているので強い力を加えても曲がりにくく、さまざまなシーンに活躍する一品です。直線状で長さがあるため、地震や火事など災害時の救出用にもあると安心。
ばね鋼と呼ばれるSUP9を採用しているため、強度はとても高いです。業務用としてはもちろん、農作業やガーデニングなど家庭用としても愛用している方も多く、土の中の大き目の石を掘り出したりすることもできるパワフルなバールです。
土牛 マイティバール
狭い隙間にも差し入れやすいスリムタイプの土牛製バールです。長さ19㎝、重さ100gとコンパクトかつ軽量で、小回りの利く一品です。壁に貼ったパネルの釘抜きや板を剥がしたりするのに便利で、非常時や災害救助用というより細かい作業に適しています。
流線形のヘラのような形状で、シルバーを基調にしたスタイリッシュなデザインも魅力ポイント。コンパクトで収納場所もとりません。機能性・耐久性・収納性と3拍子揃っている割にリーズナブルな価格で提供されています。
バクマ 六角L型バール 19×900mm
全体的に焼入れ処理が施された、曲がりにくく耐久性に優れたバクマ製の六角バールです。長さ90㎝でL字型に曲げられた部分は12㎝あります。重さは2,2kgありますが、長さがあるため家具の解体や庭木を抜いたりするのにも役立ちます。
てこの原理が効きやすく、地震の影響などで開かなくなったドアをこじ開けたり思い物を持ち上げたりするのにも使えるので、非常用の防災グッズとして買い置きしている方も多いです。
バクマ ちょーかるバール 450mm
パイプ構造によって軽量化を実現した汎用性の高いバールです。家具や建具の解体など力仕事を楽にしてくれるため、家庭でも何かと重宝する一品です。長さは45㎝ありますが、持ち手の中が空洞になっているため500gと軽く、女性でも扱いやすいでしょう。持ち運びにも便利です。
パイプの接合部分はW接合になっているため抜けにくく安全です。軽量ですが強度が高いところも人気のポイント。側溝の掃除や災害時の備えに購入する方も多いようです。
バールの効果的な使い方
最後に、バールの効果的な使い方をご紹介します。釘抜きのために購入した方も「他にこんな使い方もあったんだ」と気づきがあるかもしれないので、ぜひチェックしてみてくださいね。
バールの基本用途をチェックしよう
まずはバールの基本用途を確認しましょう。
釘抜き
バールの最も基本的な用途が釘抜きです。ヘッド部分の切れ込みに釘を挟んでハンドルを下に押すと、てこの原理で簡単に抜くことができます。垂直に抜けると釘穴を小さく収められます。
剥がす
貼り付いた板やパネルなどを引き剥がすという役割もあります。剥がし作業は平バールタイプが適していて、扁平な方を挿し入れてこじ開けます。
釘締め
釘締めは、釘の頭が木材から飛び出ているとき、深く打ち付けるためにおこないます。釘締めに適しているのは先端が細く尖ったバールです。尖っている部分を釘に当てた状態で、バールの反対側の先端をハンマーなどで叩けば、釘を深く打ち付けて木材をしっかり固定させることができます。
叩く
L字型のバールや三徳釘締めなど、ヘッド部分がしっかりしているタイプは小型ハンマーとして使うこともできます。大工仕事の微調整や解体作業など、叩き作業が必要な場面は色々ありますから、ハンマー代わりになるバールがあると効率的です。
ガーデニングや農作業に
多目的に使えるバールは、力作業の多い庭の手入れや農作業にも重宝します。例えば、長尺タイプのバールを使えば、てこの原理を利用して伐採した後の根を掘り起こすことができます。また、木の根に固着した土をバールのヘッドで叩きほぐすという使い方も。
側溝を持ち上げる
枯れ葉などが溜まりやすい側溝は定期的な掃除が必要ですが、結構重いので女性や高齢者が一人で取り外すのはこんなんです。そんなときに長めのバールがあれば、先端を穴に引っ掛けて安全に持ち上げることができます。
災害・非常時の備えに
1m程度の長さのあるバールは、地震などの災害時の救出作業にも役立ちます。ハードな使い方をするので強度が求められますが、女性が使う場合は扱いやすい軽量タイプにしましょう。
ドアをこじ開ける
地震などで家屋が変形するとドアが開かなくなり、人が閉じ込められてしまいます。人力では難しい状態でも、てこの原理で数百キログラムのパワーが出るとも言われるバールを使えば、隙間に差し込んでこじ開けられる可能性が高まります。
がれきを除去する
倒壊した建物の家具や柱などに人が下敷きになってしまったとき、バールがあれば一人でも重い物を持ち上げて助け出せるかもしれません。災害後の後片付けにも重宝するでしょう。
車両から救助する
地震や落石事故などで車の中に人が閉じ込められた場合、バールで窓を叩き割れば救助しやすいです。
バールを使いこなすコツ
バールは、適切な使い方をしないと対象物を傷つけてしまうことがあるので、以下のポイントに気をつけて使いましょう。
端を持つと力を加えやすい
ここまで何度も触れていますが、バールはてこの原理を用いて効率的に釘抜きや剥がし作業をするアイテム。てこの原理を最大限に引き出すには、なるべくバールの端を持つのポイントです。
板を傷つけない釘抜き方法
釘抜きをする際、L字のバールをそのまま使うと木材に傷を付けてしまうことがあります。釘をバールの先端で挟んだら、支点となる部分に木の切れ端などで当て木をして対象物を守りましょう。
釘がめり込んでいる場合
釘抜きをしたいのに釘の頭が少ししか出ていない場合は、L字側ではなくI字側のバール先端を釘の頭に引っ掛け、反対側からハンマーで叩けば釘が浮きやすくなります。
また、釘がめり込んでいて頭が沈んでしまっている場合は、その周りを少し削る必要があります。先割れタイプのバールであれば、その先端を当てながら反対側からハンマーで叩くと釘の周りが削れて掘り越せるようになります。
剥がし作業のコツ
板などを剥がすときは、バールの先端をなるべく奥まで差し込むと木材の我を防ぐことができます。大きな板を剥がす場合は長さのあるバールの方が効率的です。
まとめ
ここまで、1本持っておくと何かと便利なバールの選び方や人気商品の特徴などについて、さまざまな角度からご説明してきました。参考になる情報や気になる商品はありましたか?
バールの基本形はL字型ですが、スタンダードな平バールをはじめ、釘抜き専用のカジヤタイプ、マルチ機能の三徳釘締めタイプなど色々なバリエーションがあります。サイズも長短ありますから、どのような目的で使うのかをよく検討し、ご自身が使いやすい商品を選びましょう。重さや強度も大切な検討ポイントです。
また、DIYというより災害などの緊急用に購入する場合は、なるべく長尺タイプを選び、寝室や玄関の傘立てなどに保管しておくと、いざというときに役立ちますよ。
バールは日常生活で頻繁に使うものではないため、選び方や使い方がピンとこない方も多いかもしれませんが、基本用途や使い方のコツを知れば色々な場面で活用できます。
ここでご紹介した効果的な使い方も参考にしながら、ご自身の用途に合うバールを見つけて適切に使いましょう。